OF THE LAMBS
羊たちの沈黙
ホラーとして紹介されることもありますが、実際には非常に丁寧な人物劇です。何が怖さを作っているのかを分解してみます。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- ジョナサン・デミ
- 原作
- トマス・ハリス
- 出演
- ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン
- 上映時間
- 118分
- 日本公開
- 1991年6月
あらすじ(ネタバレなし)
FBIアカデミーの訓練生クラリス・スターリングは、女性を誘拐して殺す連続殺人犯「バッファロー・ビル」の捜査に、異例の形で関わることになります。
彼女に与えられた任務は、収監されている元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクターから助言を引き出すこと。レクターは捜査への協力と引き換えに、クラリス自身の過去を語らせようとします。
ここが見どころ
正面を向いた切り返し
会話の場面で、俳優がカメラのほぼ正面を向いて話します。観客が「見つめられている側」に置かれるので、面会室の場面が異様に落ち着きません。
レクターの出演時間の短さ
劇中でレクターが映るのは合計しても20分に満たないと言われます。それでこの存在感を作れているのは、不在の時間に彼の言葉が効き続ける脚本の設計によるものです。
クラリスの物語である
この映画の主題は殺人鬼ではなく、男性ばかりの組織で若い女性が値踏みされ続けることです。エレベーターや検死室の場面に、それが繰り返し置かれています。
この映画について:会話しかしていないのに、いちばん怖い。
怖さの作り方が非常に知的です。血や暴力ではなく、会話の主導権が常に相手にあるという状態で恐怖を作る。レクターは何もしないのに、クラリスの過去を一枚ずつはがしていく。この非対称が全編続きます。
同時に、これはクラリスの成長の物語でもあります。彼女が最後に一人で犯人と対峙する展開は、それまで誰にも認められてこなかった人物が、自力で決着をつける話として組み立てられている。
気になる点として、犯人の造形には公開当時から批判があります。性的マイノリティの描き方として問題があるという指摘は、いまも有効だと思います。ここは擁護しにくい部分です。
この作品の良さ
- 会話だけで緊張を作る演出と撮影
- レクターを出しすぎない配分
- 組織の中の若い女性という主題が一貫している
当サイトの評価
会話しかしていないのに、いちばん怖い。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.7 |
| 映像美 | 4.5 |
| 音楽 | 4.4 |
| 演技 | 5.0 |
| 余韻 | 4.7 |
世間ではどう評価されているか
- IMDb
- 8.6 /10
- 米アカデミー賞
- 5冠 主要5部門を独占
- 記録
- 3例目 主要5部門制覇は史上3作のみ
第64回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚色賞という主要5部門をすべて受賞しました。この5部門制覇は『或る夜の出来事』『カッコーの巣の上で』に続く史上3作目です。
サスペンス/ホラー寄りの作品が作品賞を獲ること自体が異例で、ジャンル映画の評価のされ方を変えた一本としても語られます。
こんな人におすすめ
- 会話で押すサスペンスが好きな人
- 人物劇として観たい人
- 『ゾディアック』『プリズナーズ』が好きだった人
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