羅生門
88分と短く、構造も明快なので、古い日本映画の入り口としても向いています。難解ではありません。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- 黒澤明
- 原作
- 芥川龍之介『藪の中』『羅生門』
- 出演
- 三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬
- 撮影
- 宮川一夫
- 上映時間
- 88分
- 公開
- 1950年8月
あらすじ(ネタバレなし)
荒れ果てた羅生門の下で雨宿りをする杣売りと旅法師が、ある事件について語り始めます。山中で武士が殺され、その妻が襲われた事件です。
検非違使の白洲で、盗賊、妻、そして巫女の口を借りた武士の霊が、それぞれ事件を語ります。ところが三つの話はまったく食い違い、しかも全員が自分こそが殺したと言う。目撃していた杣売りの話も、また違っていました。
ここが見どころ
同じ事件を四度見せる
証言のたびに同じ場面が撮り直され、人物のふるまいが変わります。誰も客観的な事実を語れないという構造を、映像の反復だけで納得させます。
森の光
撮影の宮川一夫が、木漏れ日をレンズで直接捉えた撮影。当時タブーとされていた太陽への直接撮影で、森の場面全体に不安定な明滅を与えています。
三船敏郎の身体
盗賊多襄丸の、獣のような動きと笑い。証言によって同じ人物の印象が変わることを、演技の振れ幅で成立させています。
この映画について:同じ事件を、4人が4通りに語る。全員が嘘をついている。
構造がすべての映画です。四つの証言が食い違い、映画は最後までどれが本当かを決めない。「羅生門効果」という言葉が心理学の分野で使われるほど、この語り口は影響を残しました。
88分と短く、話も明快なので、古典としては非常に入りやすい部類です。むしろ、この構造がいま当たり前になりすぎていて、初見では「よくある話」に見えてしまう危険があります。
終盤、羅生門での結論の付け方はやや説教くさく、当時から議論があります。人間への信頼を回復させる終わり方が、それまでの容赦なさと釣り合っていないという指摘です。私も少し取ってつけた感じは受けます。
この作品の良さ
- 同じ事件を反復して見せる構造の明快さ
- 宮川一夫の撮影、特に森の光
- 88分と短く、古典としては入りやすい
当サイトの評価
同じ事件を、4人が4通りに語る。全員が嘘をついている。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 5.0 |
| 映像美 | 4.9 |
| 音楽 | 4.4 |
| 演技 | 4.8 |
| 余韻 | 4.7 |
世間ではどう評価されているか
- ヴェネツィア
- 金獅子賞 1951年
- 米アカデミー賞
- 名誉賞 外国語映画部門の前身
- IMDb
- 8.2 /10
1951年のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、翌年のアカデミー賞でも名誉賞(現在の国際長編映画賞の前身)を受けました。
この受賞をきっかけに、日本映画が国際的に注目されるようになりました。溝口健二や小津安二郎の作品が海外で観られるようになったのも、この流れの中でのことです。
こんな人におすすめ
- 構造で見せる映画が好きな人
- 古典を一本、短いもので試したい人
- 『十二人の怒れる男』が好きだった人
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