BE BLOOD
FOR OLD MEN
ノーカントリー
アカデミー作品賞を獲った作品の中でも、かなり異質な一本です。カタルシスを意図的に外してくるので、そこを承知で観ることをおすすめします。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督・脚本
- ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
- 原作
- コーマック・マッカーシー
- 出演
- ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、トミー・リー・ジョーンズ
- 上映時間
- 122分
- 日本公開
- 2008年3月
あらすじ(ネタバレなし)
1980年、テキサスの荒野。狩りに出ていたモスは、麻薬取引が銃撃戦で全滅した現場に行き当たり、200万ドルの入った鞄を持ち帰ってしまいます。
金を回収するために送り込まれたのは、シガーという名の殺し屋でした。彼は独自の理屈で人を殺し、コイン投げで生死を決めることもある。老いた保安官ベルは二人を追いながら、自分が理解できない時代が来たことを感じています。
ここが見どころ
劇伴がない
作中で音楽がほとんど鳴りません。聞こえるのは風、車、靴音、そして呼吸だけ。音楽で感情を誘導しないぶん、観客は自分で怖がるしかないという作りになっています。
モーテルの追跡
廊下の灯りが消え、ドアの下の影が動く。台詞も音楽もない数分間で、映画の緊張が最大化します。
決着を見せない
物語のもっとも重要な出来事のいくつかが、画面の外で起きて事後だけが示されます。観客が期待する対決を意図的に与えない。ここが評価の分かれ目です。
この映画について:音楽が一度も鳴らないまま、最後まで緊張が切れない。
追跡劇として非常によくできているのに、最後まで観客の期待を満たさないという不思議な映画です。当然あるはずの対決は起きず、決着は語られず、話は老保安官の独白で終わります。
ただ、これは失敗ではなく主題そのものです。理解できない暴力が来たとき、古い正義は間に合わない。シガーが不条理そのものとして描かれているのも、コイン投げに意味を持たせているのも、その一点に向かっています。
ハビエル・バルデムの芝居は突出していて、動きが少ないのに常に怖い。一方で、この終わり方は好みが明確に割れます。すっきりしたい日には向きません。
この作品の良さ
- 音楽に頼らず緊張を作る音響設計
- ハビエル・バルデムの、動かないことで怖い芝居
- 期待を外す構成が、そのまま主題になっている
当サイトの評価
音楽が一度も鳴らないまま、最後まで緊張が切れない。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.7 |
| 映像美 | 4.8 |
| 音楽 | 4.0 |
| 演技 | 5.0 |
| 余韻 | 4.9 |
世間ではどう評価されているか
- IMDb
- 8.2 /10
- 米アカデミー賞
- 4冠 作品賞・監督賞・脚色賞・助演男優賞
- 原作
- コーマック・マッカーシー 同名小説
第80回アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚色賞、そしてハビエル・バルデムの助演男優賞と、4部門を受賞しました。
劇伴を排し、カタルシスを与えない作品が作品賞を獲ったことは当時かなり話題になりました。2000年代のアメリカ映画を代表する一本として、いまも繰り返し言及されます。
こんな人におすすめ
- 静かな緊張が続く映画が平気な人
- すっきりしない終わり方を許せる人
- 『ファーゴ』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』が好きだった人
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