切腹
知名度は『七人の侍』ほどではありませんが、時代劇として一本挙げるならこれを選ぶ人も多い作品です。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- 小林正樹
- 脚本
- 橋本忍
- 原作
- 滝口康彦
- 出演
- 仲代達矢、丹波哲郎、石浜朗、岩下志麻
- 音楽
- 武満徹
- 上映時間
- 133分
- 公開
- 1962年9月
あらすじ(ネタバレなし)
泰平の世。仕える主家を失った浪人が食い詰め、大名屋敷を訪ねて「玄関先で切腹させてほしい」と申し出る事例が相次いでいました。実際には切腹などせず、体裁を嫌う武家から金をもらって帰るのが目的です。
井伊家の門前に、津雲半四郎と名乗る浪人が現れ、同じ願いを口にします。家老は彼を通し、以前ここへ来た若い浪人がどうなったかを語って聞かせます。しかし半四郎には、この屋敷を訪ねた理由がありました。
ここが見どころ
回想で構造を作る
屋敷での対話を軸に、過去が少しずつ差し込まれます。誰が何を隠しているかが、順番に開いていく構成が非常に緻密です。
武満徹の音楽
琵琶を使った不協和な響き。時代劇らしい情緒をまったく作らず、対話の緊張だけを支えています。
白砂の庭
対話の舞台となる、何もない広い庭。左右対称の構図と余白が、権威の空虚さをそのまま画にしています。
この映画について:武士道という建前を、正面から解体する。
剣戟を期待すると裏切られます。この映画の戦いは言葉で行われるもので、半四郎は刀ではなく事実の提示によって相手の建前を崩していきます。
描かれているのは、武士道という制度が、弱い者にだけ厳格に適用されるという構造です。強い側は面子のためにいくらでも解釈を曲げる。1962年の作品ですが、組織の話としていまも通じます。
仲代達矢の芝居が圧巻で、静かな声のまま緊張を上げ続けます。難点は、テンポが遅く、対話が長いこと。集中して観る必要があります。終盤の展開も含めて、後味は決して良くありません。
この作品の良さ
- 剣ではなく言葉で追い詰める構成
- 武満徹の音楽と、白砂の庭の画面設計
- 仲代達矢の芝居
当サイトの評価
武士道という建前を、正面から解体する。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 5.0 |
| 映像美 | 5.0 |
| 音楽 | 4.6 |
| 演技 | 5.0 |
| 余韻 | 4.9 |
世間ではどう評価されているか
- カンヌ
- 審査員特別賞 1963年
- IMDb
- 8.6 /10
- 評価
- 高い 時代劇の最高峰のひとつ
1963年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞しました。
国内での知名度は黒澤作品ほどではありませんが、海外の映画ファンの間では日本の時代劇の最高峰として名前が挙がることが多い作品です。2011年には三池崇史監督によるリメイクも作られています。
こんな人におすすめ
- 時代劇を一本、定番以外で選びたい人
- 対話劇が好きな人
- 組織の理不尽を描いた話に興味がある人
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