となりのトトロ
子ども向けの代表作として扱われますが、大人が観ると印象がかなり違います。何がこの作品を支えているのかを書きます。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 原作・脚本・監督
- 宮崎駿
- 音楽
- 久石譲
- 制作
- スタジオジブリ
- 声の出演
- 日髙のり子、坂本千夏、糸井重里、島本須美
- 上映時間
- 86分
- 公開
- 1988年4月
あらすじ(ネタバレなし)
昭和30年代の初夏。小学生のサツキと妹のメイは、父とともに田舎の古い家に引っ越してきます。近くの病院に入院している母の療養のためでした。
家にはススワタリが棲み、裏の森には大きな生き物がいました。メイが偶然出会ったその生き物を、姉妹はトトロと呼びます。ある日、母の容態が悪化したという知らせが届き、メイが一人で病院へ向かおうとしていなくなります。
ここが見どころ
バス停の場面
雨の夜、父を待つ姉妹の隣にトトロが立つ。会話はほとんどなく、傘を渡し、雨だれの音が鳴るだけ。この映画でいちばん有名な数分は、いちばん静かな数分でもあります。
生活の描写
井戸のポンプ、洗濯、風呂焚き、畑。ファンタジーの部分より生活の部分のほうが緻密に描かれているから、トトロが出てきても嘘に見えません。
母の不在
母は入院していて、ほとんど画面に出てきません。姉妹の明るさの下に、その不在がずっとあります。サツキが一度だけ泣く場面が効くのはそのためです。
この映画について:悪人が一人も出てこない。それでいて、ずっと不安がある。
悪人も、争いも、明確な事件もありません。それでも86分持つのは、母が帰ってこないかもしれないという不安が、通奏低音として鳴り続けているからだと思います。トトロはその不安の避難場所として置かれています。
生活描写の精度が異常に高く、水の重さ、風の通り方、土の湿り気がきちんと画になっている。ファンタジーを成立させているのは、この現実の側の作り込みです。
難点らしい難点は特にありませんが、物語の起伏を求める人には物足りないはずです。また終盤のメイの捜索は、子どもにはかなり怖い場面かもしれません。
この作品の良さ
- 生活描写の精度が、ファンタジーを成立させている
- 不安を通奏低音として置く構成
- 86分と短く、何度でも観られる
当サイトの評価
悪人が一人も出てこない。それでいて、ずっと不安がある。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.4 |
| 映像美 | 4.9 |
| 音楽 | 4.9 |
| 演技 | 4.5 |
| 余韻 | 4.9 |
世間ではどう評価されているか
- 公開
- 1988 『火垂るの墓』と同時上映
- IMDb
- 8.1 /10
- 評価
- 国際的 海外の批評家投票でも上位
公開時は『火垂るの墓』との2本立てで、興行的には振るいませんでした。評価が広がったのはテレビ放送とビデオを通じてで、後にキャラクターがスタジオジブリのロゴにまでなっています。
海外での評価も非常に高く、英『Sight & Sound』誌の批評家投票でアニメーション作品として上位に入るなど、子ども向け作品という枠を超えて扱われています。
こんな人におすすめ
- 静かな作品をゆっくり観たい人
- 家族で観る1本を探している人
- 大人になってから観返したい人
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