

燃ゆる女の肖像
恋愛映画としてよりも、「人を見る」という行為についての映画として記憶しています。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督・脚本
- セリーヌ・シアマ
- 出演
- ノエミ・メルラン、アデル・エネル、ルアナ・バイラミ、ヴァレリア・ゴリノ
- 製作国
- フランス
- 公開
- 2020年(日本)
- 受賞
- カンヌ国際映画祭 脚本賞
- 舞台
- 18世紀のブルターニュ
あらすじ(ネタバレなし)
18世紀のフランス。画家のマリアンヌは、ある島の屋敷に呼ばれます。依頼は、修道院から戻ってきた娘エロイーズの肖像画を描くこと。ミラノの貴族との結婚のために必要な絵でした。
ただし条件がありました。エロイーズは結婚を拒んでおり、絵を描かれることを承知していません。マリアンヌは散歩の相手として彼女に近づき、昼間に観察し、夜に記憶だけで描かなければなりません。
見ることを隠したまま見続ける日々。やがて絵は完成しますが、マリアンヌはその絵に納得できません。そして彼女は、自分が何をしていたのかをエロイーズに打ち明けます。
ここが見どころ
視線の設計
誰がどのタイミングで誰を見るか。この映画のほぼすべての情報が、視線の交換で伝えられます。終盤、エロイーズが「あなたが私を見るとき、私は何を見ていると思う?」と問う場面が、そのまま作品の主題です。
音楽をほとんど使わない
劇伴が存在せず、聞こえるのは波、風、火の音だけです。音楽が流れる場面が2回しかないため、そのときの効果が桁違いになります。
最後のカット
詳しくは書きません。数十秒、一人の顔を撮り続けるだけの場面で、映画史に残る終わり方の一つだと思います。
この映画について:見ることと、見られることの話。
恋愛映画として紹介されることが多いのですが、それ以上に「描く」という行為をめぐる映画です。対象を観察し、記憶し、再構成する。その過程が、そのまま人を好きになる過程と重ねられています。
男性がほとんど登場しないのも意図的です。冒頭と終盤にわずかに映る程度で、島での数週間は女性だけの世界になる。見る主体が誰なのかという問題を、構造として扱っている。
セリーヌ・シアマの演出は静かで、説明を極端に嫌います。人物の背景説明もほとんどありません。観客は、目の前で起きていることだけから判断する必要があります。
退屈だと感じる人はいるはずです。事件は起きず、会話も多くない。視線を追う集中力を要求する作品なので、疲れているときには向きません。
この作品の良さ
- 視線の交換だけで関係を積み上げる設計
- 音楽を2回しか使わない判断
- 「描くこと」と「好きになること」を重ねた構造
- 映画史に残る最後のカット
当サイトの評価
見ることと、見られることの話。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.7 |
| 映像美 | 5.0 |
| 音楽 | 4.5 |
| 演技 | 4.9 |
| 余韻 | 5.0 |
世間ではどう評価されているか
- カンヌ
- 脚本賞 2019年
- 製作国
- フランス
- 日本公開
- 2020 年
数字は2026年8月時点で確認できたものです。IMDbのスコアや公開中の作品の興行収入は、その後も変動します。
2019年のカンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞を受賞し、日本では2020年に公開されました。
2010年代以降の恋愛映画を代表する一本として、各種のベスト企画で繰り返し挙げられています。
こんな人におすすめ
- 静かな映画を集中して観られる人
- 絵画や芸術を扱った作品が好きな人
- 説明の少ない映画に耐えられる人
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