FOR OLD MEN
AND THE BUTTERFLY
潜水服は蝶の夢を見る
題材だけ聞くと重すぎて敬遠されがちですが、実際にはユーモアがあり、思っているより観やすい映画です。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- ジュリアン・シュナーベル
- 原作
- ジャン=ドミニク・ボービーの回想録
- 出演
- マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリ=ジョゼ・クローズ
- 製作国
- フランス・アメリカ
- 公開
- 2007年
- 受賞
- カンヌ国際映画祭 監督賞
あらすじ(ネタバレなし)
ファッション誌『ELLE』の編集長ジャン=ドミニク・ボービーは、42歳のときに脳梗塞で倒れます。目覚めたとき、意識は完全にあるのに、身体はまったく動きませんでした。
動かせるのは、左目のまぶただけ。医師はこれを「閉じ込め症候群」と呼びました。言語聴覚士が考案したのは、アルファベットを順に読み上げ、目的の文字で瞬きをするという方法です。
気の遠くなるような手順で、彼は言葉を組み立て始めます。そしてついに、一冊の本を書き上げることを決意します。
ここが見どころ
主観カメラ
映画の前半は、ほぼすべてが彼の視点で撮られています。ピントが合わない、まぶたが閉じると画面が暗くなる、視野が限られる。状況を説明せずに体感させるという、映像でしかできない手法です。
瞬きで綴る場面
アルファベットを読み上げる声と、瞬き。この繰り返しがひたすら続きます。退屈になりそうなものですが、一文字ずつ言葉が生まれる過程がそのまま緊張になる。
ユーモアが残っている
本人のモノローグには皮肉と冗談が混じります。悲劇として演出しない判断が、この映画をきれいごとから遠ざけています。
この映画について:動くのは左目だけ。その瞬きだけで、一冊の本を書いた人がいる。
実話ものの難しさは、題材の重さに寄りかかってしまうことです。本作はそこを手法で回避しています。主観カメラという制約を最初に置き、観客を同じ視野の中に閉じ込めてしまう。感動を要求される前に、状況を共有させられる。
監督のジュリアン・シュナーベルは元々画家で、映像の作り方に独特の感覚があります。回想や想像の場面だけカメラが自由になるという対比が、身体の不自由さを逆に際立たせている。
美化しすぎていないのも良い点です。彼は聖人ではなく、倒れる前は自分本位な人物として描かれ、家族との関係も割り切れていません。立派な話にしないという姿勢が一貫しています。
カンヌで監督賞を受賞しており、技術的な達成として評価された作品です。ただ、技術の話を抜きにしても、単純に人の話として強い。
この作品の良さ
- 主観カメラという手法を最後まで貫いた
- 一文字ずつ言葉が生まれる過程を緊張に変えた
- 悲劇として演出しないユーモア
- 主人公を聖人化していない
当サイトの評価
動くのは左目だけ。その瞬きだけで、一冊の本を書いた人がいる。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.5 |
| 映像美 | 4.9 |
| 音楽 | 4.4 |
| 演技 | 4.7 |
| 余韻 | 4.8 |
世間ではどう評価されているか
- カンヌ
- 監督賞 2007年
- 原作
- 回想録 本人が瞬きで綴った
- 製作国
- フランス ・アメリカ
2007年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞しました。米アカデミー賞でも監督賞・脚色賞・撮影賞・編集賞の4部門にノミネートされています。
原作は、実際にジャン=ドミニク・ボービー本人がまぶたの瞬きだけで綴った回想録です。彼は本の出版から数日後に亡くなりました。
こんな人におすすめ
- 実話ベースの作品が好きな人
- 映像表現としての工夫を観たい人
- 重い題材でも、湿っぽくない語り口なら観られる人
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