IN THE DARK
ダンサー・イン・ザ・ダーク
「もう一度観たいか」と聞かれたら黙ってしまう映画です。それでも、観たことを後悔はしていません。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督・脚本
- ラース・フォン・トリアー
- 出演
- ビョーク、カトリーヌ・ドヌーヴ、デヴィッド・モース、ピーター・ストーメア
- 音楽
- ビョーク
- 製作国
- デンマークほか
- 公開
- 2000年
- 受賞
- カンヌ国際映画祭 パルムドール・女優賞
あらすじ(ネタバレなし)
1960年代のアメリカ。チェコから移民してきたセルマは、工場で働きながら息子と二人で暮らしています。彼女の目は遺伝性の病気で少しずつ見えなくなっており、息子にも同じ病が待っていました。
手術を受けさせれば息子は失明を免れます。セルマは食費を切り詰め、少しずつ金を貯めていました。そのことは誰にも話していません。
視力の低下が進み、仕事にも支障が出はじめます。そんな中、貯めた金をめぐって、ある出来事が起こります。彼女は自分の状況を説明できないまま、事態に流されていきます。
ここが見どころ
ミュージカル場面の位置づけ
セルマは工場の機械音や線路の響きからリズムを拾い、空想の中で歌い出します。この映画のミュージカル場面は、現実からの逃避としてしか存在しません。楽しいはずの形式が、逃げ場のなさを示すために使われている。
ビョークの演技
本職は音楽家で、演技の経験はほとんどありませんでした。それがかえって効いていて、技巧を感じさせない。カンヌで女優賞を受賞しています。
手持ちカメラの粗さ
ドグマ95の流れを汲む撮り方で、画面は荒く、揺れます。ミュージカル場面だけ複数のカメラで撮られていて、質感が変わる。この対比が形式そのものの意味になっています。
この映画について:歌っているあいだだけ、彼女は救われている。
ラース・フォン・トリアーという監督は、観客を追い詰めることに関して容赦がありません。本作はその代表格で、逃げ道を一つずつ塞いでいくという作り方をします。セルマには何度も助かる可能性があるのに、そのたびに彼女自身の選択で閉じてしまう。
その選択が理解できるかどうかで、評価は大きく分かれます。「なぜ説明しないのか」と苛立つ人は多いはずです。ただ、説明しないことが彼女にとっての一貫性であり、そこを崩さなかったからこの映画は成立しています。
ミュージカルという形式の使い方は、映画史でも例が少ないと思います。歌は物語を進めず、状況も変えません。歌っているあいだだけ現実が止まる。それ以上のことは何も起きない。
観るのに体力が要る作品です。気軽に勧められるものではありませんが、映画がここまでやれるという例として、一度は触れておく価値があります。
この作品の良さ
- ミュージカル形式を逃避の装置として使い切った
- ビョークの、技巧を感じさせない演技
- 現実とミュージカルで画の質感を変える設計
- 主人公の一貫性を最後まで崩さない
当サイトの評価
歌っているあいだだけ、彼女は救われている。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.5 |
| 映像美 | 4.2 |
| 音楽 | 4.8 |
| 演技 | 4.9 |
| 余韻 | 4.7 |
世間ではどう評価されているか
- カンヌ
- パルムドール 2000年
- カンヌ
- 女優賞 ビョーク
- 音楽
- ビョーク が担当
2000年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、主演のビョークが女優賞を受賞しました。
楽曲もビョークが手がけています。賛否が極端に分かれる作品として知られ、絶賛と酷評が並存している状態が公開当時から続いています。
こんな人におすすめ
- 形式そのものに挑戦した映画を観たい人
- 後味の悪さを覚悟できる人
- ビョークの音楽が好きな人
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