バケモノの子
細田守の作品の中では議論の多い一本ですが、前半だけでも観る価値があると思っています。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督・脚本
- 細田守
- 声の出演
- 役所広司、宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず、大泉洋
- 製作
- スタジオ地図
- 製作国
- 日本
- 公開
- 2015年
- 興行収入
- 58.5億円
あらすじ(ネタバレなし)
母を事故で亡くし、親族にも引き取られなかった9歳の蓮は、渋谷の街をさまよっていました。行き場も、頼る相手もありません。
そこへ現れたのが、バケモノの世界から来た熊徹でした。強いが粗野で、誰からも慕われていない彼は、弟子を取ることを条件にある地位を争おうとしていました。
蓮は「九太」と名づけられ、バケモノの世界で熊徹と暮らし始めます。教え方を知らない師匠と、素直でない弟子。二人は喧嘩を重ねながら、少しずつ関係を作っていきます。
ここが見どころ
師弟関係の描写
熊徹は教えるのが下手で、九太は言うことを聞きません。「見て盗め」しか言えない師匠から、どうやって学ぶかという前半が、この映画のいちばん良い部分です。
役所広司の声
粗暴で子どもっぽい熊徹を、押しつけがましくなく演じています。本職の声優でない起用が成功した例として挙げられる仕事です。
渋谷とバケモノ界の対比
実在の渋谷を細かく描写したうえで、異界を並置しています。細田守が繰り返してきた「現実と異世界の往復」の構造が、ここでも使われています。
この映画について:行き場のない少年と、弟子を取りたいバケモノ。
前半は非常に良く出来ています。血のつながらない大人と子どもが、互いに不器用なまま関係を作っていく。説教も感動的な台詞もなく、稽古の反復だけで見せるのが良い。
問題は後半です。九太が人間界へ戻り、別の主題が持ち込まれてから、話の焦点がぶれます。図書館、進学、心の闇。詰め込んだ要素が消化されないまま終盤へ向かうという印象は否めません。
クライマックスの処理についても、比喩が唐突に具体化するため、前半の丁寧さと落差があります。ここが評価の分かれ目でしょう。
それでも、細田守が父性というものを正面から扱った作品として意味があります。『おおかみこどもの雨と雪』が母の話だったのに対し、こちらは父の話。あわせて観ると見えてくるものがあります。
この作品の良さ
- 説教なしで師弟関係を描いた前半
- 役所広司による熊徹の造形
- 現実の渋谷と異界の対比
- 父性を正面から扱った企画
当サイトの評価
行き場のない少年と、弟子を取りたいバケモノ。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 3.8 |
| 映像美 | 4.5 |
| 音楽 | 4.2 |
| 演技 | 4.1 |
| 余韻 | 4.0 |
世間ではどう評価されているか
- 興行収入
- 58.5 億円
- 監督
- 細田守
- 公開
- 2015 年
細田守の監督作で、興行収入は58.5億円。当時としては監督の最高記録となりました(のちに『竜とそばかすの姫』が更新)。
『おおかみこどもの雨と雪』が母を、本作が父を扱った作品として、対をなす形で語られることがあります。
こんな人におすすめ
- 細田守の作品を追っている人
- 師弟ものが好きな人
- 『おおかみこどもの雨と雪』を観た人
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