
バック・トゥ・ザ・フューチャー
タイムマシンで30年前へ飛んだ高校生が、自分の両親をくっつける。設定だけ聞くとコメディだが、脚本の設計は今なお教科書として扱われるレベル。
160分の音楽映画と聞くと構えますが、実際は嫉妬をめぐる非常に分かりやすいドラマです。クラシックの知識は要りません。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
老いた作曲家サリエリが、精神病院で神父に告解を始めます。「私がモーツァルトを殺した」。物語は彼の回想として進みます。
18世紀のウィーン。宮廷作曲家として尊敬を集めていたサリエリの前に、下品で子どもじみた振る舞いをする若者が現れます。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。その手から書き直しのない完璧な楽譜が生まれるのを見たとき、サリエリは自分の凡庸さを正確に理解してしまいます。
モーツァルトの手稿を目で追いながら、音が頭の中で鳴り出す。音楽の凄さを、聴かせるだけでなく「理解する顔」で見せるという演出が見事です。
サリエリを苦しめるのは、モーツァルトの音楽が本当に素晴らしいと分かることです。分からなければ嫉妬もしなかった。この設定が全編を貫きます。
衰弱したモーツァルトが『レクイエム』を口述し、サリエリが書き取る長い場面。憎んでいる相手の音楽を、自分の手で形にしていくという皮肉が最大化します。
史実としては相当に脚色されており、サリエリが実際にモーツァルトを害したという記録はありません。これは伝記ではなく、才能と嫉妬についての創作だと理解して観るのが正しい向き合い方です。
その前提に立てば、脚本は非常に強い。凡人の側から天才を見るという視点の設定が完璧で、観客の大半は当然サリエリの側に立たされます。神への呪いという形を取っているのも効いています。
音楽の使い方も見事で、曲が場面の感情そのものになっています。160分と長いですが、後半に向かって加速するので体感はそこまでではありません。モーツァルトの造形が下品すぎるという批判はありますが、これも意図的なものだと思います。
天才の話ではなく、天才を理解できてしまった凡人の話。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.8 |
| 映像美 | 4.7 |
| 音楽 | 5.0 |
| 演技 | 5.0 |
| 余韻 | 4.6 |
第57回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞を含む8部門を受賞しました。原作はピーター・シェーファーの同名戯曲です。
この作品の影響でサリエリが「モーツァルトを妬んだ凡人」というイメージで広く知られるようになりましたが、史実の彼は当時高く評価された作曲家であり、教育者としても優れていました。作品と史実は分けて受け取る必要があります。
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