人情紙風船HUMANITY AND PAPER BALLOONS
邦画1937年時代劇1930年代山中貞雄

人情紙風船

戦前の日本映画で、いま最も観る価値のある一本だと思います。

ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。

作品データ

監督
山中貞雄
脚本
三村伸太郎
出演
河原崎長十郎、中村翫右衛門、山岸しづ江
上映時間
86分
公開
1937年8月

あらすじ(ネタバレなし)

江戸の裏長屋。朝から、浪人が首を吊ったという騒ぎで始まります。住人たちは葬式代わりに酒を飲みます。

浪人の海野又十郎は、亡父の紹介状を頼りに仕官の道を探していますが、門前払いが続きます。妻は内職の紙風船を作りながら、黙って夫を見ています。

隣に住む髪結いの新三は、博打で稼ごうと、質屋の娘をさらう計画に手を出します。二つの話は、思わぬ形で交差します。

ここが見どころ

殺陣を見せない

時代劇でありながら、斬り合いの場面をほとんど画面に出しません。音と、その後の結果だけで示します。

雨の描写

冒頭と結末に置かれた雨。長屋の路地が濡れているだけで、この物語の温度が決まります。

最後の紙風船

水路を流れていく紙風船のカット。台詞ひとつなく終わります。

この映画について:28歳で戦死した監督の、最後の作品。

山中貞雄はこの作品の公開日に召集され、翌年に28歳で戦病死しました。現存する監督作は3本しかありません。

娯楽時代劇が全盛だった時期に、これほど救いのない話を撮ったことが驚きです。武士も町人も、誰も浮かび上がりません。

難点は、フィルムの状態が良くないことと、当時の台詞回しに慣れが要ることです。

この作品の良さ

  • 殺陣を見せない演出
  • 長屋の生活描写
  • 最後のカット

当サイトの評価

4.4/5.0

28歳で戦死した監督の、最後の作品。

項目別の採点(5点満点)
項目点数
脚本4.5
映像美4.6
音楽4.1
演技4.6
余韻4.8

世間ではどう評価されているか

評価
戦前日本映画の代表作 各種投票で上位
IMDb
7.8 /10
監督
現存3作 28歳で戦病死

国内外の批評家による日本映画の選出で、繰り返し上位に挙げられている作品です。

山中貞雄の監督作で現存するのは『丹下左膳余話 百萬両の壺』『河内山宗俊』と本作の3本のみです。

こんな人におすすめ

  • 戦前の日本映画に触れたい人
  • 救いのない話でも平気な人
  • 時代劇の幅を知りたい人

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