君の名は。
社会現象と呼ばれた作品ほど、あとから冷静に語りにくくなります。公開から10年経った今の目で、どこが本当に良くて、どこが弱いのかを整理してみました。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 原作・脚本・監督
- 新海誠
- 作画監督
- 安藤雅司
- キャラクターデザイン
- 田中将賀
- 音楽
- RADWIMPS
- 声の出演
- 神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ
- 上映時間
- 106分
- 公開
- 2016年8月26日
あらすじ(ネタバレなし)
東京で暮らす男子高校生・立花瀧と、飛騨の山あいの町に住む女子高生・宮水三葉。まったく接点のない二人が、ある日を境に、眠るたびに互いの身体で目を覚ますようになります。
最初は夢だと思っていた二人も、周囲の反応からそれが現実だと気づきます。会うことはできないので、スマホのメモとノートに書き置きを残してルールを決め、互いの生活をなんとか回していく。奇妙な共同生活のような日々の中で、二人は少しずつ相手のことを知っていきます。
ところがある日、入れ替わりは突然途絶えます。連絡も取れない。瀧は、三葉の記憶にある風景だけを頼りに、彼女に会いに行くことを決めます。
ここが見どころ
前半の入れ替わりダイジェスト
RADWIMPSの『前前前世』に乗せて、入れ替わりの日常を一気に見せる数分間。本来なら退屈になりがちな「慣れていく過程」を、音楽と編集で丸ごと省略した判断が見事です。この速度があるから、後半に時間を使える。
中盤の反転
詳しくは書きませんが、ある一点で物語の前提がひっくり返ります。ここまでの軽やかなラブコメが、まったく別の話に変わる。この一撃の設計がこの映画の背骨です。
カタワレ時
昼と夜の境目の空を背景にした場面。新海誠作品らしい空と光の描写が、物語上いちばん必要なタイミングで最大出力になります。美しいだけでなく、その美しさに機能がある。
君の名前は。
劇中より
この映画について:「入れ替わり」の一言で片づかない、構成と速度の映画。
この映画のいちばんの手柄は速度だと思っています。106分という尺で、入れ替わりコメディ、田舎と都会の対比、災害、時間のズレ、再会までを詰め込んでいるのに、慌ただしく感じない。要らない説明を切って、感情の要点だけを繋いでいく編集がとにかく上手い。
そして中盤の反転。あそこで作品の意味が変わることで、前半の何気ない場面がすべて別の色を帯びます。初見時の「そういうことだったのか」という感覚は、やはり体験する価値があります。
映像は文句のつけようがありません。新海誠監督のこれまでの持ち味だった光と空の描写に、安藤雅司さんの作画監督としての人物芝居が加わって、絵として一段階上がっている。RADWIMPSの曲を場面転換の装置として使う構成も、賛否はありますが少なくとも徹底しています。
弱いと感じるのは終盤です。感情のピークが複数回来るぶん、一つひとつの余韻が短い。特にラストは、あそこまで積み上げた再会にしては駆け足に見えました。また、キャラクターの掘り下げは主役二人にほぼ集中していて、周囲の人物は役割を果たすと消えていきます。ここは尺の代償だと思います。
声の演技については好みが分かれるところです。プロの声優ではない配役が自然さを生んでいる場面と、感情の振り幅が必要な場面で物足りなくなる場面の両方があります。
この作品の良さ
- 106分に詰め込みながら、まったく渋滞しない編集
- 中盤の反転が、前半すべての意味を書き換える
- 光と空の映像表現は現在でもトップクラス
- 音楽と映像の同期が徹底している
当サイトの評価
「入れ替わり」の一言で片づかない、構成と速度の映画。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.6 |
| 映像美 | 4.9 |
| 音楽 | 4.8 |
| 演技 | 4.0 |
| 余韻 | 4.3 |
世間ではどう評価されているか
- 国内興行収入
- 250.3 億円
- IMDb
- 8.4 /10
- 日本アカデミー賞
- 受賞 最優秀アニメーション作品賞
国内興行収入250.3億円。公開から48週目に250億円を突破し、日本の歴代興行収入ランキングでも上位に入り続けている大ヒット作です。若い観客のリピート鑑賞と口コミが数字を押し上げたことで、公開後半にかけて動員が伸び続けたという珍しい経過をたどりました。
海外でも中国をはじめとするアジア圏で大きく当たり、新海誠監督の名前を国際的に知らしめた作品になりました。一方で、評価が高すぎる反動として「過大評価では」という声も一定数あり、批評的な位置づけは『千と千尋の神隠し』ほど固まっていないというのが実感です。
こんな人におすすめ
- 2時間弱で気持ちよく持っていかれたい人
- アニメーションの映像表現に興味がある人
- 『秒速5センチメートル』『天気の子』の系譜を追いたい人
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