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Facebook創業の物語。IT起業の映画かと思って観ると、実際に描かれているのは、うまくいけばいくほど孤立していく人間の話。台詞の速度が異常。
難しい映画として語られがちですが、私はむしろ親切な映画だと思っています。どこが親切なのかを具体的に書きます。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
他人の夢に入り込み、頭の中から情報を盗み出す。そんな技術が存在する世界で、コブはその道の一流でした。しかし彼は過去のある出来事のせいで祖国に戻れず、家族と会えないままでいます。
ある依頼人が持ちかけたのは、情報を盗むのではなく、逆にある考えを相手の頭に植えつけるという仕事でした。成功すれば帰国できる。コブは専門家を集め、夢を何層にも重ねる計画に取りかかります。
新人の設計士アリアドネを入れて、彼女に質問させることで観客への説明を成立させています。古典的ですが、これがあるおかげで置いていかれません。
夢の階層ごとに天候、色、テンポが違い、いま何層目かが一目で分かるようになっています。同時進行のクライマックスで混乱しないのはこの設計のおかげです。
回転するセットを実際に作って撮影した場面。CGではない物理的な回転なので、俳優の身体の重さがそのまま画に出ています。
複雑な設定の映画で失敗するのは、たいてい観客が現在地を見失うときです。この映画はそこを徹底的に潰しています。階層ごとに見た目を変え、時間の進み方をルール化し、キックという合図で切り替える。迷子にならないための工夫が全編にあります。
その一方で、感情の中心にあるのはコブと妻の話で、こちらはかなり単純です。仕掛けは複雑なのにドラマは素朴、という組み合わせがこの映画の特徴で、ここが物足りないという評価も分かります。
終盤は同時進行が4層になり、正直やや忙しい。また、夢という題材のわりに画が現実的で整いすぎているという指摘もあります。私も、もう少し不条理があってよかったと思っています。
夢の中の夢の中の夢を、迷わせずに見せ切る。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 4.5 |
| 映像美 | 4.8 |
| 音楽 | 4.8 |
| 演技 | 4.3 |
| 余韻 | 4.2 |
第83回アカデミー賞で撮影賞・視覚効果賞・録音賞・音響編集賞の4部門を受賞。オリジナル脚本賞にもノミネートされました。
原作を持たない大予算のSFが世界的に当たった例として、しばしば引き合いに出されます。ラストの解釈をめぐる議論が公開から現在まで続いていることも、この作品の記憶され方を象徴しています。
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