生きる
黒澤明監督といえば時代劇ですが、現代劇の代表作がこれです。いま働いている人ほど刺さる作品だと思います。
ネタバレについて:この記事はネタバレなしで書いています。結末や物語の核心に触れる内容は載せていません。
作品データ
- 監督
- 黒澤明
- 脚本
- 黒澤明、橋本忍、小国英雄
- 出演
- 志村喬、小田切みき、日守新一
- 上映時間
- 143分
- 公開
- 1952年10月
あらすじ(ネタバレなし)
市役所市民課長の渡辺勘治は、30年間無欠勤で、机の上の書類に判を押すだけの日々を送ってきました。住民が陳情に来ても、たらい回しにするのが仕事です。
ある日、彼は自分が胃がんで余命わずかであることを知ります。息子にも打ち明けられず、繁華街をさまよい、若い元部下の生気に触れた渡辺は、ひとつのことを決意します。住民が求めていた、小さな公園を作ることでした。
ここが見どころ
後半が通夜から始まる
物語の途中で渡辺は死に、残りの1時間近くは通夜の席で関係者が彼を語る形式になります。本人が何を考えていたかは最後まで直接描かれません。この構成が異様に効きます。
たらい回しの描写
冒頭、陳情に来た主婦が課から課へ回される場面。役所の無責任さがコメディとして描かれ、それが後半への伏線になります。
ブランコの場面
雪の降る夜、完成した公園のブランコで渡辺が歌う。日本映画でもっとも有名なカットのひとつで、ここに至るまでの1時間半が全部この数十秒に収束します。
この映画について:余命を知った公務員が、たった一つだけ仕事をする。
感動作として紹介されますが、作りはかなり意地が悪いです。通夜の席で同僚たちは彼を讃え、涙を流し、自分たちも変わろうと誓う。そして翌日、全員が元通りに判を押しています。
つまりこの映画は、一人の人間が変われたことと、組織はまったく変わらないことを同時に描いています。感動と冷笑が同居していて、その両方が正しい。ここが強度の理由です。
志村喬の芝居は、目の演技だけで別人になっていくのが分かる水準です。難点は143分という長さと、後半の通夜の場面がやや冗長なこと。ここで一度中だるみします。
この作品の良さ
- 死後の証言から人物を再構成する大胆な構成
- 感動と組織批判を同時に成立させている
- 志村喬の芝居
当サイトの評価
余命を知った公務員が、たった一つだけ仕事をする。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 脚本 | 5.0 |
| 映像美 | 4.6 |
| 音楽 | 4.4 |
| 演技 | 5.0 |
| 余韻 | 5.0 |
世間ではどう評価されているか
- IMDb
- 8.2 /10
- ベルリン
- 受賞 国際映画祭で受賞
- 英国
- リメイク 2022年に英国で再映画化
ベルリン国際映画祭で受賞するなど海外でも高く評価され、黒澤明監督の現代劇の代表作とされています。
2022年にはイギリスでカズオ・イシグロ脚本によるリメイク『生きる LIVING』が製作されました。70年前の日本の官僚組織を描いた作品が、そのまま現代の英国に置き換えられたことは、この物語の普遍性を示しています。
こんな人におすすめ
- 働き方について考えたい人
- 静かな現代劇が好きな人
- 黒澤明の時代劇以外を観てみたい人
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